コロナウィルスの影響で長引く自粛生活。
”巣ごもり消費”が加速している今、最近スーパーではホットケーキミックスやドライイーストが品切れ状態になっている。
メルカリやラクマなどのフリマアプリでは、それらの商品が定価の数倍で出品されており、それでも売れているというから驚きだ。

今まで「購入できることが当然」だった納豆やホットケーキミックスなどの食品が品切れ状態になったり、「オンライン飲み会」など新たなワードが登場してくるなど、コロナウィルスの影響で食市場には目まぐるしい変化が起きている。
コロナウィルス発生後に起きた食トピックを振り返ってみると、見事に「マズローの欲求五段階説」にあてはまっていたから面白い。

1つず見ていこう。
1.コロナウィルスの深刻さに気付き、生理的欲求が爆発

ダイヤモンドプリンセス船内で集団感染が確認された時、私たちはどこか他人事としてコロナウィルスをとらえていただろう。
しかし、3月下旬に国内感染者数が1,000人を超え、東京オリンピックの延期が発表された頃から、「これは大ごとだ」と日本中がパニックに陥る。
そして、「物流がストップし、食糧が手に入らなくなってしまうかもしれない!」「生きていくために必要最低限の食品を確保しなくては!」という、マズローの欲求五段階説の第一階層にあたる「生理的欲求」から、カップラーメンや乾麺、缶詰など日持ちする商品が次々とスーパーから消えた。
「味や栄養価は気にしな。とにかく飢え死にしないように日持ちする食糧を。」
このような思いにかられた人がスーパーに殺到し、「買占め」がTwitterトレンドワードになるなど、日本中が大混乱となった。
2.先の見えない未来が引き起こした安全欲求

緊急事態宣言が発令された4月上旬。「食糧がスーパーから無くなることはない」ということが分かった人々が、これから始まる先の見えない自粛生活を前に感じたこと。
それは、「安全・安心な暮らしがしたい、健康的な暮らしがしたい」という、マズローの欲求五段階説で第二階層にあたる「安全欲求」である。
「ウィルスに負けないよう免疫力が付く食べ物が欲しい」「健康的な身体をつくるために、栄養がある食品が欲しい」という思いから、単に保存期間が長い食品ではなく、栄養バランスの優れた健康食品に注目が集まる。
スーパーやネットショップでは、たんぱく質が豊富に含まれた納豆や、大豆でできたソイミートなどが品切れ状態になった。

また、新鮮で栄養価の高い野菜が定期的に届くoisixなどの食品配送サービスの需要も高まっていった。
3.人と会えない生活が続き、不足する社会的欲求

「安全欲求」が満たされると、次にくるのが「社会的欲求」である。
緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出を自粛する生活が続き、会社に行くことも、友達に会うこともできなくなる。
人と関わる機会がなくなり、家で1人で過ごす時間が続くと、孤独感や社会的不安が募ってくる。
「誰かと話したい、交流したい」「どこかに属することで安心したい」
そんな帰属欲求から、SNSで「私の好きな料理」などのテーマに応え、友人にバトンを回していく「リレー企画」、zoomなどを利用した「オンライン飲み会」、オンライン超しに一緒に料理を作る「インスタライブ企画」など、ネットを介して他人と交流できるサービス・企画が次々と登場した。
外で飲むより安く済む上に、終電を気にせず、酔っぱらったらすぐにベッドに飛び込めるという呑兵衛には最高の環境の「オンライン飲み会」が浸透したことで、スーパーではチューハイが品切れ状態になることもあった。

4.今までにない生活が続き、高まる承認欲求

自粛生活が続き、人々が抱える欲求は、これまでの「外的に満たされたい」という低次のものから、「心を満たしたい」という高次のものに変わってくる。「承認(尊厳)欲求」だ。
会社で上司に褒められることも、デートで可愛いねと言ってもらえることも、高級レストランでの写真をSNSに投稿してイイネをもらうこともできなくなると、「他者から認められたい、尊敬されたい」という承認欲求がムクムクと湧いてくる。
SNSには、今までとは異なる、承認欲求を満たすためのコンテンツが投稿されるようになる。
ここでユニークなのは、各SNSによってコンテンツが全くことなること。
お取り寄せした高級グルメや、韓国発の映えコーヒー「ダルゴナコーヒー」をはじめインスタ映えする手作りスイーツなどの写真が投稿されるInstagram。

コロナショックを受けた飲食店が生き抜く方法や、afterコロナに対応するために、今をどのように過ごせばいいのか?など、真面目な提言が飛び交うTwitter。
退屈なおうち時間をユニークにするために、食を使ったオモシロ動画を投稿するTikTok。

投稿内容はそれぞれ異なれど、承認欲求に基づいたアクションがSNSで見られるようになった。
5.自粛生活に徐々に慣れ、最後に求めるは自己実現欲求

人と会わない生活、自宅から一歩も出ずに過ごす自粛生活に慣れてくると、「自己実現欲求」が生まれてくる。
「他者に認められたい、評価されたい」というよりは、「自分が今できることを精一杯したい」「この機会を使って成長したい」という想いが高まってくるようになり、クリエイティビティ溢れる活動をはじめる人々が増えてくる。
普段作らないような凝った料理を作ってみる。
製菓材料を揃えてパンやスイーツを作ってみる。etc…
このような創作活動を行う人々が増加した結果、スーパーでは小麦粉やホットケーキミックス、バター、ドライイーストなどの食材が次々と品切れになっていった。

ちなみに海外では、コロナウィルスの形をしたスイーツが作られている。(食べるのが怖い…)

このように、マズローの欲求五段階説に沿って、コロナ期間中に起こった様々な食トピック。
忘れてはならないのは、今私たちが自己実現欲求に励むことができるのも、安定的に食糧を生産し、運搬し、スーパーで販売してくださっている方達のお陰である、ということ。
安心・安全な生活を支えてくれている人々に感謝の気持ちを忘れず、この自粛生活を乗り越えていきたい。