ニューヨーカーから愛された高級食料品店「DEAN & DELUCA」が失墜したワケ

私が初めて海外旅行をしたのは小学生の時でした。行き先はニューヨーク。
街並みもレストランも道行く人も…何もかもが眩しくて、私はすぐにニューヨークの虜になりました。

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目に映るもの全てが新鮮だったけれど、食べることが大好きだった私の目をくぎ付けにしたのは、「DEAN & DELUCA(ディーン&デルーカ)」でした。

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真っ白な壁。タイル張りの床。洗練されたデザインの店内。
日本では見かけることのない珍しい食材や焼き菓子。ショーケースの中にはカラフルなケーキや鮮やかなデリ。

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まるで「食のミュージアム」のようなディーン&デルーカは小学生だった私の心を鷲掴みにしました。


それから20年。私の想い出の場所であるSOHOエリアにあるディーン&デルーカに旗艦店に足を運んだ際、あまりの変わりように愕然としました。

薄暗い店内。スカスカの商品棚。お客さんの姿もほとんどいません。
小学生だった私を興奮させた、かつてのディーン&デルーカの面影はそこにはありませんえでした。

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一体ディーン&デルーカに何が起こったのでしょうか?


ディーン&デルーカとは?

1977年、ジョルジョ・デルーカとジョエル・ディーンがニューヨーク・マンハッタンにオープンした高級食料品店「ディーン&デルーカ」

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ニューヨークで最初にエキストラバージンオリーブオイルやバルサミコ酢を提供した店でもあるディーン&デルーカは、「食のセレクトショップ」と呼ばれ一躍ニューヨーカーの心を掴みました。

2003年には日本にも上陸。日本では珍しい食材や、ニューヨークスタイルのインテリアデザインが人気となり、女性はこぞって「Dean & Deluca」のトートバックを肩にかけ街を歩いていました。


ニューヨークで相次ぎ閉店するディーン&デルーカ

日本では銀座や恵比寿など一等地に店舗を構えるなど、まだまだ人気の「ディーン&デルーカ」ですが、本場ニューヨークでは経営不振により店舗が次々と閉店するという事態に陥っています。

現在、アメリカにあるディーン&デルーカの店舗は、ニューヨークとハワイにある4店舗のみとなっています。
冒頭に記載した通り、旗艦店であるSOHO店はオープンこそしているものの、商品は棚に補充されておらず、お客さんもほとんどいません。

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空のショーウィンドーには「ご不便をお掛けしてすみません」というメッセージカードが貼られていました。

さらに、今年4月にNYにオープンした、ドイツの有名建築家オーレ・シェーレンがデザインした、フードと建築を組み合わせた新コンセプトレストラン「STAGE」は、オープンから3ヶ月という短さで閉店してしまいました。

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ディーン&デルーカに何が起こっているのか?

発端は、2014年にタイの不動産開発会社「Pace Development(ペース・ディベロップメント)」に買収されたこと。
ペース・ディベロップメントは、多額の金額を投資し、ブランドを再生させようとしてきましたが、その戦略が間違えていたと囁かれています。

開店から3か月で閉店してしまったコンセプトの店舗「STAGE」も失敗例の1つとして挙げられています。
店舗設立にあたっての欧州視察旅行や、著名な建築家へのギャラの支払い、マンハッタンの一等地に建てた店舗にかかる高額な賃料も重荷になったそう。

同時に、全米オープンテニス選手権の派手なスポンサーシップや、この公式スポーツバーとなったミシュラン星付きシェフが作ったバー「Dean&DeLuca Bio Nutrition Bar」の立ち上げにも多くのコストを費やしました。

(ちなみにこのスポーツバーは「チョークのような味」と揶揄されているます。)

また、長年取り引きをしてきた小規模ベーカリーに対しての支払いが滞っていることも問題となっています。
例えば、15年以上にわたり、ディーン&デルーカにデコレーションクッキーを卸してきたニューヨークのベーカリー「Eleni’s Cookies」には86,000ドルの支払いが滞っているといいます。

その他にも、バターをたっぷり使用したデニッシュパンを提供していたベーカリー「Bien Cuit」や、かわいらしいクッキーを提供していたベーカリー「Amy’s Bread」など、多くのベーカリーへの未払金が問題となっています。

ディーン&デルーカと取引していたベンダーは、支払いがされないことを恐れ、今ではビジネスを中止しています。そのため、旗艦店であるSOHOのディーン&デルーカには商品がほとんどないのです。


なぜ高級食品店「ディーン&デルーカ」は失墜してしまったのか?

ディーン&デルーカ敗因の要因は、「市場の変化に対応せず、創業当時のポジションで胡坐をかき続けていたこと」だと私は考えています。

ディーン&デルーカがオープンした1977年は、オリーブオイルやキャビアといった食材がなかなか手に入らいない時代であったため、「珍しい食材、高級な食材を提供している」というだけで人々の心を捉えることができていました。

しかしそれから40年が経ち、かつて入手困難であった高級食材は、イータリーやアマゾンで簡単に購入することができるようになりました。
ディーン&デルーカの看板商品であった「高級デリ」も、ホールフーズに行けば、もっとリーズナブルな価格でオーガニック野菜を用いたヘルシーで美味しいものを購入することができます。


ミレニアル世代を中心に、今は「高級な商品」よりも「ローカル」「体験価値」「サスティナビリティ」という要素が重視されつつあります。
お高くとまった画一的なブランドよりも、親しみのある「らしさ」のあるブランドに人々は魅かれるようになってきています。

たとえば、今アメリカで勢いに乗っている食料品店「イータリー」

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キャビアや高級チーズなどの高級食材を取り揃えながらも、焼きたてピザが楽しめるベーカリーや、シーフードサラダなどイタリアのデリをカジュアルに楽しめる場も提供し、「イタリアの市場」のような雰囲気を創り出しています。

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また、店舗にはキッチンルームが併設されており、イタリア料理教室やワインとチーズのマリアージュを学ぶセミナーなど、イタリアの食文化を体感できるイベントを数多く開催しており、商品だけでなくユニークな食体験も提供し、ファンとの絆を深めることに注力しています。

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このように食を取り巻く環境は大きく変化し、ライバルが続々登場してたにも関わらず、単なる「高級食品を扱うブランド」というポジションに胡坐をかいたままであったため、ディーン&デルーカは失墜してしまったのではないだろうかと考えます。


なぜ日本では人気が衰えないのか?

本家ニューヨークでは完全に下火のディーン&デルーカだが、日本での人気は衰えていません。

なぜ日本では依然として人気なのか?それは日本人のニューヨークに対する憧れにあると考えられます。

私たち日本人にとってニューヨークは永遠の憧れ。ニューヨークのトレンド情報はいつだって話題になるし、「ニューヨーク発」というフレーズが付けば人々はすぐに飛びつきます。

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ディーン&デルーカの商品はどれも決して安くはないが、ニューヨークのライフスタイルを味わうために私たち日本人はお金を費やしています。

休日のブランチに、ロゴが入ったマグカップにコーヒーを淹れ、スモークチキンとバジルソースを合わせたキッシュロレーヌを食べ、ニューヨークの風を感じる。

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このようなライフスタイルを望む日本人が多いため、日本でディーン&デルーカの人気は衰えないのかもしれません。


ディーン&デルーカの今後の行く末は?

珍しい高級食材を提供することで、多くの人々を魅了してきた「ディーン&デルーカ」。
「食のスペシャリストが選んだ食材を主役に」というブランドコンセプトからもう一歩踏み込み、食材を通じて人々のライフスタイルをどうしていきたいのか?を突き詰めることで、復活への道が見えてくるかもしれません。

小学生だった私を魅了してくれたDEAN & DELUCA。
どうか潰れないで欲しいと願うばかりです。

Photo : https://www.deandeluca.com/

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